ポジショニングと経営資源|企業支援の現場で感じてきた「両方を見る」ことの重要性
企業のマーケティングや事業戦略を考える仕事をしていると、「どの市場を狙うのか」「競合とどう違いをつくるのか」という話になることがよくあります。
いわゆるポジショニングです。
私自身も、企業支援のなかでSTPや競合分析を使いながら、どこに機会があるのかを考えてきました。一方で、さまざまな企業に関わるなかで、次第に気になるようになったことがあります。市場として魅力的な場所が、その企業にとって本当に良い場所とは限らないのではないか。ということです。
市場が魅力的でも、うまくいかないことがある
成長している市場がある。顧客ニーズもある。競合との違いもつくれそうに見える。資料の上では、とても魅力的な市場に見えることがあります。ところが実際に施策を考え始めると、
「そこに対応できる人材がいない」
「営業の仕組みがない」
「生産能力が追いつかない」
「その価値を説明できる人がいない」
といった問題が出てくることがあります。反対に、社内には優れた技術やノウハウがあるのに、それを必要としている市場や顧客との接点が十分につくられていない企業もあります。こうした場面を何度か経験するうちに、ポジショニングだけを見ても、経営資源だけを見ても十分ではないのではないかと考えていたことはやはり真理なんじゃないかと。
「顧客から求められること」と「自社ができること」
企業には、それぞれ異なる資源があります。人材、技術、商品、ノウハウ、営業網、顧客との関係、ブランド、設備、データ、組織文化。同じ市場を狙ったとしても、企業によって使える資源は違います。一方で、その資源がどれほど優れていても、顧客から求められていなければ、そのままでは価値になりません。そこで私は企業を見るとき、顧客や市場から見たポジショニングと、それを実現するための経営資源を、できるだけ同時に見ます。
どちらか一方を先に決めるというより、両方を行ったり来たりしながら考えていく感覚です。
「右上」にいる企業は強いのではないか
これを整理するために、私は二つの軸で考えることがあります。一つは、顧客から見た市場やポジションの魅力度。もう一つは、それを実現できる経営資源の充実度です。市場から求められていて、自社にもそれを実現する力がある。
図にすれば、右上に位置する状態です。
企業支援の経験から見ると、この右上にいる企業は、比較的戦いやすいように感じます。逆に、市場は魅力的だけれど資源が足りない場合もあれば、優れた資源を持っているのに、それを生かせる市場を十分に見つけられていない場合もあります。もちろん、すべての企業を単純に二軸で説明できるわけではありません。ただ、戦略を議論するときにこの二つを分けて考えてみると、「なぜうまくいっていないのか」が整理しやすくなる場面があります。
経営資源は固定されたものでもない
もう一つ、企業支援をするなかで感じるのは、経営資源は必ずしも固定されたものではないということです。足りない人材を育てる。外部の会社と組む。新しい営業の仕組みをつくる。採用する。技術を導入する。場合によっては、事業提携やM&Aという方法もあります。
つまり、現在持っている経営資源だけでポジショニングを決める必要もありません。
目指したいポジションが見えてきたことで、「では、そのために何が足りないのか」という次の問いが生まれることがあります。この問いが戦略を具体化するうえで重要なのではないかと考えています。
市場と自社を往復して考える
企業支援では、市場分析をして終わるわけでも、自社の強みを整理して終わるわけでもありません。顧客を見る。競合を見る。自社を見る。そして、もう一度顧客を見る。
この往復を何度も繰り返していると「この会社だからこそ、ここで価値を出せるのではないか」という場所が少しずつ見えてくることがあります。
私が最近、ポジショニングと経営資源をセットで考えることが多くなったのは、こうした企業支援の経験が背景にあります。どこで戦うのか。そして、その場所で戦うための力を自社は持っているのか。持っていないとすれば、何をつくる必要があるのか。この二つを行き来しながら考えることが、企業の戦略を現実のものにしていく一つの方法だと思います。
重要なのは、一度「良いポジション」を見つけることだけではなく、市場から求められ、自社にもそれを実現する力がある「右上」の状態に、どれだけ長く居続けられるかではないかということです。市場も競合も顧客も変化する以上、現在の強みがそのまま将来の強みであり続けるとは限りません。だからこそ、ポジショニングを見直しながら、人材、技術、組織、ブランド、顧客基盤といった経営資源も更新していく。その継続こそが、企業の競争力を考えるうえで重要だと思います。
