信頼資本とは何か――「評判」と「資本」はどう違うのか|黒木勝巳マーケティング・広報事務所【InShift】

信頼資本とは何か――「評判」と「資本」はどう違うのか

「知名度が上がれば、売上もついてくる」

経営者の方とお話していると、こうした言葉を耳にすることがあります。確かに、大企業は誰もが知っています。しかしその知名度の源泉を辿ると、全国に物理的な店舗を構え、テレビCMを打ち続けられる資本力に行き着きます。それを支えているのは、多数のプロフィットセンター(収益部門)です。

では、プロフィットセンターが限られた中小企業や地方企業が同じ方向を目指すと、どうなるでしょうか。広告宣伝費が先行し、成果が後からついてこないという経験をお持ちの方も、少なくないのではないかと思います。

こうした経験を重ねる中で、私が注目するようになったのが「信頼資本(Trust Capital)」という概念です。

「フロー」の評判と「ストック」の資本

評判と信頼資本の違いを考えるとき、「フロー」と「ストック」という視点が役に立つかもしれません。

広告に依存した評判や知名度は、広告費という燃料を投下し続けることで維持される「フロー」の性質を持ちます。雨が降れば川の水位が上がるように、コストの投下を止めれば水位は下がります。

対して「信頼資本」は、日々の誠実な取引や約束を守るプロセスを通じて、地層のように積み重なっていく「ストック」の性質を持ちます。

経済学において「資本」とは、①投資によって蓄積され、②生産活動に寄与し、③メンテナンスしなければ減価償却するもの、と定義されます。信頼もこれと似た性質を持つのではないか、というのが私の考えです。

「いい会社」であることと、成果が出ることの間にある溝

広告合戦に参加せず、地元で誠実に商売をしている企業であれば、必ず儲かるのでしょうか。

残念ながら、必ずしもそうではないように見えます。単に「信頼されている」という状態は、信頼がまだ「原石」のまま埋まっている状態かもしれません。これを「資本」として機能させるためには、その信頼を市場の中で伝わる形へと「構造化」するプロセスが必要になります。

例えば、ある工務店に「あの大工さんは腕が良い」という近所の評判があったとします。しかしそれだけでは、隣町の顧客はその工務店を選ぶことができません。施工実績やお客様の声としてWebサイトで発信し、第三者機関による品質認証やメディア掲載という客観的な形を得て初めて、その信頼は「資本」として動き始めるのではないでしょうか。

信頼資本とは、「見えない信頼」を「見える資産」へと変換する構造、とも言えるかもしれません。

統計から見えた「見えない資産」の影響力

107社の企業の広報・信頼構築活動と売上の関係を統計解析した結果、決定係数(R²)は0.38という数値が出ました。「売上変動の約38%は、認知や信頼といった見えない資産と関係がある可能性がある」という示唆です。

なお、現時点では検証中のモデルであり、解釈には慎重さが必要です。ただ、無数の要因が絡み合うビジネスの世界で「信頼」に関わる変数がこれだけの説明力を持つという傾向は、一つの判断材料になるのではないかと思います。

また、興味深いのは「一過性の露出」が売上に直接影響しないという結果が出ている点です。バズることや単発のメディア掲載が、必ずしも売上に繋がるわけではない——現場で感じてきたことが、データにも表れていました。

信頼は「持つ」だけでなく「使える状態にする」ことが大切

地方の中小企業には、長年かけて築いてきた地域や取引先との「つながり」があります。大企業が資本力で買おうとしても、簡単には手に入らない本物の資産です。

ただ、その資産を「持っている」状態と「資本として使える」状態の間には、埋めるべき溝があるように感じています。その溝を埋めるプロセスを考えることが、私がコンサルティングで一貫して取り組んできたことです。を高度に統合し、全体最適の視座から捉え直すことが求められているのではないでしょうか。

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