「ゼロクリック検索」の時代に、企業の情報発信はどう変わるべきか|黒木勝巳マーケティング・広報事務所【InShift】

「ゼロクリック検索」の時代に、企業の情報発信はどう変わるべきか

近年、「ゼロクリック検索」という現象が注目されています。SEOで上位表示されても、流入が増えない。その違和感は、気のせいではありません。
ユーザーがGoogleで検索した際、検索結果ページ上のAI要約やナレッジパネルで疑問が解決し、どのWebサイトにもアクセスせずに検索を終えてしまう行動を指します。

検索しても、クリックされない

この傾向を裏付けるデータとして、米SparkToro社がSemrush傘下のDatos社と共同で公開した調査(2024年7月)があります。数千万規模のユーザーから取得した実際のブラウザ行動ログ(クリックストリーム)を分析したもので、検索後に「どこをクリックしたか/しなかったか」を行動レベルで集計した点に特徴があります。

主な結果は以下のとおりです。

  • 米国のGoogle検索の58.5%、EUの59.7%がゼロクリックで終了した
  • Google検索1,000回あたり、Google以外のWebサイトに届いたクリックは米国で360回、EUで374回にとどまった
  • クリックの約30%はYouTube、Googleマップなど、Google自身の関連サービスに流れていた

つまり、検索結果で上位に表示されていても、ユーザーがサイトを訪れるとは限らない時代に入りつつあるということです。なお、この調査は米国・EU市場を対象としたものであり、日本市場の実測値ではありません。ただし、日本でも2025年3月にAI Overviewsが本格導入されており、同様の傾向が進行していると考えるのが自然です。

出所:SparkToro “2024 Zero-Click Search Study” https://sparktoro.com/blog/2024-zero-click-search-study-for-every-1000-us-google-searches-only-374-clicks-go-to-the-open-web-in-the-eu-its-360/

各社が提唱する対策

この変化を受け、国内のSEO・マーケティング各社からさまざまな対策が提唱されています。代表的なものを整理すると、大きく3つの方向性に集約されます。

第一に、AIに引用されるための技術的最適化(GEO/LLMO)。構造化データの実装やFAQマークアップの整備により、AIがコンテンツを参照しやすくするアプローチです。第二に、指名検索の強化。ブランド名で直接検索してもらうことで、ゼロクリックの影響を受けにくいトラフィックを確保する考え方です。第三に、一次情報の発信。AIが他から拾えない独自データや実務知見を提供することで、サイト訪問の動機を作る戦略です。

いずれも有効な方向性です。しかし、これらの施策に共通しているのは、「すでに整理された情報を、いかに届けるか」という発信技術の議論であるという点です。FAQを増やしても、構造化データを整えても、企業として何者なのかがズレていれば、結局“推薦しづらい会社”のままです。

「届け方」の前に、「中身の構造」がある

AIが情報を評価する仕組みを考えると、技術的な最適化だけでは十分とは言えません。

生成AIは、特定のページを単独で評価するのではなく、ウェブ上に散在する企業情報を横断的に参照し、整合性を確認した上で要約・推薦を行います。広報では理念を語り、営業では価格を訴求し、採用では働きやすさを強調する——部門ごとに文脈が異なる発信が矛盾を含んでいれば、AIは専門性の判定を保留し、推薦対象から外す可能性があります。

つまり、技術的な最適化が機能する前提として、「自社は誰の、どんな課題を、どう解決しているのか(WWH)」が部門を横断して一貫している必要があるということです。

GoogleがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼)として掲げている評価基準も、本質的にはこの構造の話です。「経験」は自社の強みの言語化、「専門性」はその一貫した発信、「権威性」は第三者からの評価、「信頼」はそれらの蓄積による市場への定着。これらは個別の技術的対応だけで構築できるものではなく、組織としての情報設計が問われます。

発信の「前提」を点検する

ゼロクリック検索の時代において、検索結果上でどう見せるかという技術的対策は引き続き重要です。同時に、その土台となる「情報の整合性」——自社の実力が、顧客主語で、部門を横断して、矛盾なく構造化されているか——を改めて点検する必要があるのではないでしょうか。

当社が無料公開している「広報診断ツール」は、この「発信の前提となる信頼の構造」が自社内でどの程度整っているかを可視化するものです。技術的な最適化に取り組む前に、あるいは並行して、一度ご活用いただければ幸いです。

あなたの会社の信頼は、今どの段階にありますか。
無料の広報診断で、現状を可視化してみてください。 → [広報診断(無料)はこちら]
現場で感じたことを毎週お届けしています。[メルマガ「やってみる前に読む話」登録はこちら]

PAGE TOP