[SaaS]自社の強みを再発見し、事業領域を拡大
調査会社からデータサイエンス企業への進化
Contents
背景と課題
ある調査市場で確かな地位を築いていたC社。その強みは、100万人以上の会員を有し、膨大な店舗データと顧客フィードバックを収集できる独自の「情報収集基盤」。これにより、クライアントが自社の店舗運営状況を定量的に把握することを可能にしていました。しかし、収集したデータの評価が「絶対値」に基づいていたため、競合他社や市場全体と比較した際の強み・弱みを明確にするのが難しい状況でした。
また、調査市場自体の成長余地に限界が見え始め、情報収集基盤を活かして新たな価値を提供し、市場を拡大する必要性が浮上。こうした背景から、情報収集基盤の強化とそのデータ活用法を抜本的に見直し、新たな成長戦略を構築しました。

情報収集基盤の進化とデータ活用
取り組み①:情報収集基盤の進化
C社が最初に取り組んだのは、情報収集基盤の精度と活用法の見直しでした。
- 相対評価の導入
収集したデータを「絶対値」から「相対評価」へ転換。店舗や地域ごとのスコア比較を可能にする仕組みを構築しました。これにより、たとえば「接客スコア80点」という評価が、地域平均より10点高い優れた結果なのか、それとも全国平均を下回る改善余地のある評価なのかを即座に判断できるようになりました。 - 外部データとの連携
C社の情報収集基盤を外部のマクロデータ(例: 実質賃金、旅行者動向)と連携。これにより、特定の地域や業界が直面する環境要因を考慮したデータ分析が可能に。たとえば、「外国人観光客の増加があるエリアでは、一定以上増加すると日本人客の顧客満足度が低下する」といった示唆が生まれました。 - 対象市場の拡大
飲食業界や小売業界にとどまらず、宿泊業やレジャー業界への展開を実現。情報収集基盤を応用することで、多様な業界に適応可能なサービスを構築しました。
リブランディングと広報戦略の強化
取り組み②: 情報収集基盤を核にしたリブランディング
情報収集基盤を活かした新たな価値を市場に訴求するため、リブランディングを実施しました。
- 社名変更とVIの刷新
社名を変更し、ロゴやビジュアルアイデンティティ(VI)を一新。情報収集基盤から生まれる「正確性」「信頼性」を表現するデザインを採用しました。また、社内外で使用する資料やウェブ会議背景、広告デザインに至るまで統一感を持たせ、「一貫性」のあるブランドイメージを構築しました。 - 特許取得による信頼性向上
情報収集の信頼性を高めるために、感情定量化プログラムを開発し、特許を取得。この技術が情報収集基盤の差別化要因となり、新たなクライアント層へのアピール材料となりました。 - 広報活動の拡充
展示会でのセミナー登壇や調査結果リリースの頻度を月1回から5回へと拡大。情報収集基盤の特徴や、そこから得られるデータの活用事例を広く発信することで、業界内での認知度と信頼性を大幅に向上させました。
クライアント獲得とデジタル施策の成功
取り組み③: 情報収集基盤を活用したクライアント獲得
情報収集基盤を核としたサービスのリブランディングは、具体的な成果を生み出しました。
- 新規クライアント獲得
BtoB向けウェブサイトをリニューアルし、情報収集基盤の活用事例を具体的に紹介。問い合わせ数が月平均20件から、最高月50件を超える成果を達成しました。 - ROAS(広告費用対効果)の向上
情報収集基盤のデータを活用し、ターゲティング精度を高めた広告施策を実施。その結果、広告費用対効果(ROAS)は200%から500%へと改善。広告投資がより効率的な新規顧客獲得につながりました。 - 既存クライアントの満足度向上
収集したデータを基に、既存クライアントに対して具体的な改善提案を提供。リピート契約率の向上と、クライアントからの長期的な信頼獲得を実現しました。
総括: 情報収集基盤を活かした事業変革
C社のコアコンピタンスである「情報収集基盤」。これを軸に事業を再定義し、リブランディングを通じて市場を広げた取り組み。結果として、従来の「覆面調査会社」という枠を超え、新たな市場に対応できる「データソリューション提供企業」へと進化しました。この事例は、企業が自社の強みを活かし、成長のための変革を遂げる際の指針となるでしょう。
